平成10年度科学技術振興調整費総合研究課題
「炭素循環に関するグローバルマッピングとその高度化に関する国際共同研究」
実施計画
I. 試験研究の全体計画
2. 研究概要
2.2 衛星データを用いた陸域の炭素循環と一次生産および関連諸量のマッピングに関する研究
陸域における一次生産量の分布を把握するとともに、炭素循環に関わる諸量を観測してプロセスを明らかにする。さらにリモートセンシングデータと炭素循環プロセスとの関係を解析し、リモートセンシングデータを高度に利用した一時生産力及び炭素循環の解析方法を明らかにする。
(1) 森林における生産力のマッピングと一次生産及び関連諸量の推定に関する研究
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i) 森林生態系における二酸化炭素フラックスの動態評価と森林群落炭素循環モデルの開発に関する研究
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(農林水産省林野庁森林総合研究所、<一部委託>北海道大学農学部附属演習林、静岡大学理学部)
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森林の炭素循環プロセスの解明を踏まえた地上データと衛星データとのリンクを行うため、生育段階や環境によって変動する森林群落の光合成や呼吸さらにリター生産量などの生理的パラメータと環境要因等を定量的に解析して、森林群落内部での炭素フラックスをモデル化し、炭素循環プロセスを定量的に解明する。樹木の光合成・呼吸等の測定と生理反応の解析の部分を北海道大学農学部附属演習林に、有機物の分解を含めた森林の土壌呼吸の測定と解析を静岡大学理学部に委託する。
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ii) 大気-森林間の炭素フラックス観測の高度化に関する研究
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(農林水産省林野庁森林総合研究所)
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埼玉県川越において大気-森林間の二酸化炭素フラックスを渦相関法を用いて連続観測する方法を確立するとともに、森林のバイオマス諸量との関連を解明し、炭素収支を算定する。さらに、上記①のグループのコンパートメント間の炭素フラックスの観測結果と比較して観測精度の検証を行う。
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iii) 森林分類の高度化と一次生産力のマッピング手法に関する研究
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(農林水産省林野庁森林総合研究所東北支所、<一部委託>千葉大学環境リモートセンシング研究センター)
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中国東北部および日本を精査域として、生産力に基づいた分類項目に基づいた森林植生の分類手法を開発する。一方、埼玉県川越の観測タワーにおいてスペクトル観測を実施し、他のグループで測定される諸量や衛星データとの関連を解明し、衛星データと生産力の関係を明らかにする。草地を潅木から分離し分類する部分を千葉大学環境リモートセンシング研究センターに委託する。なお、これらの研究は中国科学院リモートセンシング応用研究所及び中国林業科学院森林科学研究所との共同で実施する。
(2) 農耕地における生産力のマッピングと一次生産及び関連諸量の推定に関する研究
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i) 農耕地生態系における二酸化炭素フラックスの動態評価と衛星データ等に基づく植被パラメータの精密マッピング手法の開発に関する研究
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(農林水産省農業環境技術研究所、<一部委託>岐阜大学流域環境研究センター)
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衛星データを地表面における植被特性やフラックスに関わるパラメータに定量的に結びつけるため、地理情報等に基づいた時系列衛星データ利用の高度化手法、ならびに機器計測や調査による実測データの収集とそのスケーリングアップのための精密リモートセンシング手法の開発と検証を行い、これらに基づいて農耕地における植被特性の年間変動に基づく精密な領域区分と植被パラメータの高精度マッピング手法の開発を行う。農耕地生態系における二酸化炭素の動態解明の部分を岐阜大学流域環境研究センターに委託する。
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ii) 農耕地生態系における衛星データと環境情報を用いた広域的炭素収支モデリングに関する研究
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(農林水産省農業環境技術研究所)
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高度化した衛星データと環境情報を用いて、作物生産と土壌呼吸を考慮した炭素循環プロセスに基づき、農耕地生態系における炭素の動態を明らかにする。このため、生物・物理的プロセスモデルを開発し、環境情報を利用してスケールアップするとともに、衛星データを活用して炭素の動態を解析する。
(3) 草地・湿地における生産力のマッピングと一次生産及び関連諸量の推定に関する研究
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i) 草地生態系の炭素フラックスと蓄積に対する植生と環境の影響に関する研究
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(科学技術庁研究開発局、<委託>山梨県環境科学研究所)
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自然草地と人工草地を対象に高精度の土壌呼吸や炭素蓄積量の測定を行い、炭素のフラックスと蓄積に対して環境が与える影響を解明する。さらに、炭素循環モデルにより草地生態系の年間の炭素収支を明らかにする。
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ii) 湿地域における二酸化炭素吸収量推定手法の高度化に関する研究
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(環境庁国立環境研究所)
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各種光学センサーのデータを用いて、一次生産量の推定に最適な湿地内の植生分類を実現する。これとバイオマスサンプリング調査とスペクトル計測に基づいて湿地植生のタイプ毎の一次生産量をスペクトル情報を用いて推定する手法を確立する。