I. 試験研究の全体計画

1. 研究の趣旨

　地球的規模の環境変化に関する問題は、人類の当面の最重要課題となっており、温暖化に関する政府間パネル（IPCC）は、温暖化が気候変化をもたらし、地球環境へ様々な影響をもたらすことを指摘してきた。この地球温暖化は、気温の上昇を通じて、海水準の上昇、気候の変化、生態系の変化等様々な分野に深刻な影響を与えると危惧されている。特に、温暖化の原因物質のうち最も重要な二酸化炭素に関しては、人類活動に伴う二酸化炭素の放出について、その排出規制の問題が真剣に議論されるなど、生活習慣や産業基盤への大幅な変更が近い将来要請される可能性が高い。
　これまで全球規模での炭素循環リザーバーについて収支計算が行われてきたが、海・陸域も含めた収支の整合性や面的な精度に大きな問題があった。しかも、これまでの方法では、季節・年変動を含めた時系列データの把握は困難で、プロセス研究の成果との整合性も不十分で、海陸を併せた一次生産のグローバルマッピングさえ行われてこなかった。そこで、炭素循環に関する高精度のプロセス研究とそれをグローバルスケールに展開したマッピングが強く求められる。
　そこで、地球温暖化に影響をおよぼす炭素の循環機構を明らかにするため、衛星データを用いて海域、陸域の炭素循環に係るパラメータの分布を観測し、一次生産および関連諸量についてグローバルマッピングを行う。一方、炭素循環研究は地球表層の物質循環研究の中で最も進んでいるので、海洋および陸上での精査域を設定し、高精度の観測を実施して炭素循環のメカニズムを理解し、プロセスモデルを構築する。そして、バルク法から発展しプロセスを考慮した高精度マッピングの高度化を達成し、数値モデルによる検証により、気候変動による炭素循環への影響を理解する。なお、本プログラムはIGBP（International Geosphere-Biosphere Programme ; 地球圏−生物圏国際共同研究計画）-JGOFS（Joint Global Ocean Flux Study ; 共同地球規模海洋フラックス研究計画）、PAGES（Past Global Changes ; 地球環境変動）、TEMA（Global Change Impacts on Terrestrial Ecosystems in Monsoon Asia ; モンスーンアジア陸域生態系における地球変化へのインパクト）、DIS（Data and Information Systems ; データ及び情報システム）への貢献も期待されている。