JGOFSデータ管理委員会等出張報告

5 所感等

 1990年代は、地球環境変動に係る海洋の研究プロジェクトが多数実施され、特に世界海洋循環実験(WOCE)については、水路部も旧「昭洋」によって太平洋を横断する大観測を実施するなど積極的に関与した。JGOFSもそうした研究の一つであり、国際的には物理分野のWOCEと、化学分野のJGOFSと並列で議論されるものである(これらに生物分野としてGLOBECを加えるべきかもしれない)。世界の海洋における温暖化物質(二酸化炭素など)の振る舞いを理解しようという野心的な計画である。JGOFSについて水路部は、観測の面ではあまり貢献していないが、データ管理の分野では、JGOFSに関係する研究者グループから求められて、JODCがデータ管理オフィスの役割を担っている。JGOFSはそろそろ観測期間が終了し、データ解析やモデリングに研究の主体がシフトするため(この事情はWOCEと同様)、データ管理にまつわる動きが国際的にも活発化している。
 こうしたことを背景に、今般JODCの三宅海洋情報官がJGOFSデータ管理タスクチームのメンバーに指名され、これから本格化するJGOFSデータ管理のあり方について議論するため、今回の会議が開催された。道田は、データ管理についてはJGOFSよりも先行しているWOCEにおいてデータ管理の国際委員を務めていることから、併せて今回の会議に出席を求められた。
 WOCE、JGOFSでは、研究者の間ではそれまであまり顧みられていなかった「データの管理」の問題をプロジェクトの開始当初から重要視しており、WOCEでは観測から2年後のデータ公開を明文化し、観測データの品質を厳しくチェックするなど、従来の海洋データ管理活動ではカバーできないデータ管理を行った。そのためWOCEにおいては、各国のNODC群からなるIODEシステムを用いたデータ管理を行わず、全く別のシステム(データ項目毎のデータ集積センター等)を採用した。しかしWOCEの最終局面を迎えて浮上した問題は、これらのデータ集積センター等の多くは各国データセンターのような安定した組織でない場合が多く、データの最終保管に不安があるということである。そのため、WOCEでも、最終保管を確保するため、JODCを含む各国データセンターに対する期待が大きくなっている。
 今回のJGOFS-DMTTでも、WOCEがここ2、3年に行ってきた議論とほとんど同じことが話題となった。すなわち、データの長期保管をいかに確保するか、ということである。IODEの仕組みは、一時期研究者などから顧みられなくなりつつあったが、WOCE、JGOFSのデータ管理を通じた努力によって、息を吹き返しつつあると感じられた。地球環境変化など、長期の環境変化を議論する場合には、取得された観測データが長期間きちんと保管されていることが本質的に重要であるため、データ保管の責務を有する我々データセンターの役割はますます重要で責任の重いものとなる。