「海洋生物コード(プランクトン)2001年版」の概要

2002年3月

「海洋生物コード(プランクトン)2001年版」は、海洋生物データをコンピュータにより効率よく管理するため、海洋生物(プランクトン)種を分類学上の体系に合わせてコード化したもので、生物種数8088種(亜種を含め8242種)を収録しています。

1.海洋生物コードの構成

現在までに登録した全生物種を一般的な分類体系の順に下表のように並べ掲載している。フィールドとは下記の各項目を登録するにあたって、データファイル上に用意された半角文字数である。
各項目の詳細は後述する。

フィールド 項目 項目内容
01-05 名称コード 00001〜99999 (整数)
06-19 分類コード 00000000000000〜99999999999999(整数)
 06-07  門
 08-09  綱
 10-11  目
 12-13  科
 14-15  属
 16-17  種
 18-19  亜種(変種、品種)
20 名称フラグ J:和名 S:同物ないし同物に近い異名
D:日本産であることの疑問種名 L:幼生名 Z:幼生の異名 
ただし正式な学名にはフラグを置かず空白にする 
21- 名称 学名、和名、英名、幼生名など

2.コード化の範囲

基本的に門から目の分類階級については、全ての生物を登録している。しかし、CYANOPHYTA(藍色植物門)とPROCHLOROPHYTA(原核緑色植物門)を除くMONERA(モネラ界)、および海草の類を除くLICHENES(地衣界)、およびPLANTAE(植物界)全てのMYCOTA(菌界)と、VERTEBRATA(脊椎動物亜門)の内TETRAPODE(四肢動物上綱)は海洋プランクトンに全くと言って良いほど含まれるものではないので登録していない。

目より下のレベルについては、海洋生物の内、特にプランクトンとして出現するものを対象としてコード化を行なっている。ただし、種数の限られる分類群については、ベントス、ネクトン及び寄生生物も併せて登録している場合がある。

この度の2001年版では、1988年に作成した「海洋生物コード」に登録されている生物種に加え、日本産海洋プランクトン検索図説(千原光雄・村野正昭編、1996、東海大学出版会)を参照し、専門分野の方々からのご指導を得て、新たに種登録を行うとともに、分類体系についても最新の知見を取り入れている。

3.コード化の方法

コードは、生物名称を複数の桁の数字で示したものであり、「分類コード」と「名称コード」の2種類を設定した。

  1. 分類コード
    分類コードは、以下に示すように14桁の整数からなっている。これは、門あるいは綱などの各分類層レベルごとに各々2桁ずつの整数を割り当て、基本的に最近よく使用されている生物分類学上の体系と一致するようになっている。ただし、多数の科を構成する亜目については、目の代わりに亜目を登録するなどといったような、分類包含関係を認識しやすくする工夫がなされていることがある。
      |−−|−−|−−|−−|−−|−−|−−|(14桁)
       門  綱  目  科  属  種  亜種

                        (変種)

                        (品種)
    なお、分類コードの上位2桁は、
  2. 名称コード
    名称コードは5桁の整数で構成されている。これは分類コードとは対応せず、生物群あるいは種の名称と一対一に対応したコードになっている。したがって分類コードとは異なり、所属する分類群が将来的に変更されても、種名自体が無効になっても名称コードが変更されることはない。この名称コードは、次のような観点から設けた。

    1. 観測表(野帳)等に記載されているデータをコンピユーター処理するためには、観測表に記入されている生物名等をデジタル化する必要があるが、分類コードを使用した変換では桁数が多いので、コンピューター上で分類コードに変更する労力の軽減化とともに誤入力の減少になる。
    2. 生物には、同一種でシノニム(同物異名)や和名などのように複数の名称を持つ場合が多いが、1つの生物群あるいは種に対しては同一の分類コードが与えられるので、一度それに変換されてしまうと、観測表上にはどの名称で記載されていたのかが不明になってしまう。本コードではこの名称コードを記録することによって、それを知ることが出来る。
    3. 分類の未確定な生物では、分類の変更の起こることがある。名称コードを記録することにより、分類の変更に広く対処できる。


  3. 名称フラグ
    これは生物名称の性質を示すフラグであり、目的に応じて、J、S、D、L、Zを付した。
    Jは上の行にある正式な学名に対する最も一般的な和名であることを示している。なおこの正式学名自体にフラグは付けられていない。
    Sは正式学名のシノニムないしは、和名の異名であることを示している。ただし、複数種に分割され、基産地の種名に変更はないが、日本近海などで一部の海域についてだけ学名が変更になった場合には種名の後ろにsensu人名を付し、一部の地域の個体群だけが シノニムになったことを識別できるようにしている。さらに、無効になったが、かつてよく使われた分類群名については、たとえ完全なシノニムにならなくても、構成種がよく類似する現行の有効な高次分類群の下に、Sフラグを付け、登録することがある。
    次いで、Dは疑問種であることを示すフラグである。日本の特に古い図鑑では、外国産の種をあたかも日本にいるかのように不用意に図ごと引用する例が少なくない。図鑑は一般の人の目に留まりやすので、その存在を無視するわけにも行かない。種名自体は基産地では有名であるが、日本に出現することは疑わしいことをこれにより示している。
    さらに、Lは上の行の分類、ないしそれに所属する一部の種に対して呼ばれる幼生名であることを示している。また、幼生名の異名はZで表している。

  4. 名称(学名等)
    学名は、各分類階級(門・綱・目・科)ごとに門から科までの名称表示の文字位置を一文字スペースずつ右にずらしており、各分類群の包含関係が判り易くなるように表示している。ただし、科より下の各分類階級はずらしていない。


  5. sp. について
    属名は科から上の分類群名と異なり、語尾変化に規則性がない。そこで属名を登録する際は、判別を用意にするため全てそのあとにsp.を付加している。したがって、構成種1種のみの属についても、分類学的には正しい標記ではないが、sp.を付加している。


4.分類体系について

分類体系については、検討会委員および専門家によって違った意見があった。しかし登録方法を統一するために、必ずしも、それぞれの意見に従えなかったものもある。 今後、必要に応じて体系を修正することができる。


海洋生物コードの監修にあたって

本2001年版生物コードの作成にあたり、東京水産大学 大森 信 名誉教授、をはじめとする方々のご指導・助言、並びにご校閲を仰ぎ完成に至りました。ここに紹介させていただきますとともに厚くお礼申し上げます。