WOCE DPC-13 出席報告

JODCニュース No.61(2000.9)から抜粋

 世界海洋循環実験(World Ocean Circulation Experiment:WOCE)のデータプロダクツ委員会(Data Products Committee:DPC)の第13回会合が、200045日〜7日に米国テキサスA&M大学で開催され、委員として出席しました。8人の委員全員に加え、各データの集積センターの関係者など30名以上の出席がありました。

 今回は、i) WOCE Global Data Ver.2.0の内容確定 ii) CLIVARへの移行に伴うWOCEデータシステム及びDPCの役割 iii) WOCEデータの最終保管方法などが議題でした。

 まずデータセット改訂版に関する議論が行われました。19985月にカナダのハリファックスで開催されたWOCEコンファレンスの場で、WOCEの観測データを収録したCD-ROMセット(WOCE Global Data Ver.1)が配付されました。当時の議論では、その後収集または改訂されたデータを収録して、Ver.22000年中に刊行することになっていました。Ver.1では、WOCEコンファレンスの場にまとまったデータセットとして公表すること自体に重点が置かれ、各データセット相互の統一性などは、Ver.2以降で検討するとされていました。そのため、今回の会合では、各データセンターが試作したCD-ROMの内容について相互の関連なども含めて検討されました。Ver.2は、20007月中旬までに内容の最終改訂作業を行い、米国NODCが複製を作成して、2000年秋に公開することが確認されました。

 続いて、前回会合から重要案件となったCLIVARへの移行に関する議論が行われました。WOCEの終了を控え、WOCEで曲がりなりにも確立したデータシステムをCLIVARに生かす方法について、今回は大幅に時間を割いて議論されました。前回会合(19994)の段階では、CLIVARのデータ管理に対する要求水準が必ずしも明確ではなかったこともあり、WOCEデータシステムのCLIVARへの移行について、具体的な議論には入れませんでした。前回の報告(JODCニュースNo.59)でも述べたように、CLIVARに必要なデータシステムは何か、という本質的な議論は抜きにして、漠然と、「各DACSACは、WOCEの終了後も引き続き業務を行うことは可能か」という問いかけがあっただけでした。しかし今回は、CLIVAR側でもDTT(Data Task Team)が本格的に活動を開始したことから、こうした動きを踏まえた議論となりました。

 CLIVAR-DTTの議長でWOCEではDIU(Data Information Unit)を担っているデラウェア大学のF. Websterが、CLIVAR-DTTの動きを紹介し、CLIVAR Data Planなるものを検討中であること、共通のツールで多分野にわたるデータサービスを行う仕組みとして、GOSIC(Global Observation Systems Information Center)という構想が練られていることを報告しました。また、私見と断りつつ、GOSICは既存のGTSPP(Global Temperature and Salinity Profile Project)GSN(GCOS Surface Network)を基礎として発展させるべきであると指摘しました。CLIVARでは、リアルタイム性の高いデータ管理が要求されるため、それに対する対応が盛んに検討されています。これに対して、WOCE側から、遅延モードのデータ管理の重要性について様々な観点から指摘がありました。Websterによれば、「WOCESACのような品質管理の重要性はCLIVARにおいても変わらない」ということです。

 さらに、WOCEデータの最終保管に関する意見交換が行われ、これまでの議論の通り、当面米国NODCが最終保管について責任を持つことが改めて確認されました。これに関連して委員のR. Schlitzer()は、「WOCEデータは、海洋学にとって1990年代の貴重な遺産としてWOCE以外のデータを含む米国NODCや世界データセンターの中に埋没させるべきではなく、WOCEデータセットとして独立した管理も検討すべきである」と指摘しました。これについてはWOCEの終了に向けて議論を継続することになりました。

 最後に未提出データの収集が引き続き話題となり、各研究代表者から提出されていないデータに関して、その対策が議論されました。係留系データの未提出者とADCPデータのそれがほぼ一致することが明らかとなり、当該研究者に対してはデータ提出を強く促すと同時に、今回会議の報告書にデータ未提出者の一覧を掲載することとしました。

 我が国のWOCEデータのうち未提出のものは、早急に提出する必要があります。またCLIVARへの移行については、CLIVAR側にデータの問題を検討するチームが結成され、具体的な議論が開始されたことから、DPCCLIVARに対して、WOCEデータシステムのうちCLIVARへも継承すべきこと等について提言を行うことが必要になってきたと思われます。CLIVAR-DTTのメンバーは、今のところ欧米諸国に偏っていますが、今後はアジアからの参加について積極的に対処すべきであると思います。


(東京大学海洋研究所 道田 豊)