WOCE DPC-12  出席報告  

JODCニュース No.59(1999.9)から抜粋


 世界海洋循環実験(World Ocean Circulation ExperimentWOCE)のデータプロダクツ委員会(Data Products CommitteeDPC)の会議が、1999年4月12日〜15日に英国バーケンヘッドのプラウドマン海洋研究所において開催され、これに委員の一人として出席しました。前回の会議(1998年1月、ホノルル)で、米国のLindstromが議長を退き、今回会合からは、Legler(米)とBindoff(豪)が共同議長を務めています。委員のほか、各データの集積センターの関係者などが出席し、さらに今回からは、近い将来CLIVARのデータ管理体制を整備する必要性のためCLIVARの関係者3名も加え、総勢約30名の規模となりました。前回と同様、初日はWOCEデータの解析結果による科学的成果に関するセミナーが行われ、残り3日でDPCの実質議論が行われました。

 まず、WOCE Global Data Ver.1CD-ROM)のレビューが行われ、初版としてはまずまずの出来映えで、データセットに対する評判も概ね良好であると評価されました。ただ、ある海域について多くの種類のデータを利用したい場合に、必ずしも便利な形態になっていないことも指摘されました。データセットの次期バージョンは、2000年5月に刊行する方針が確認され、最終データセットは2002年5月をめどとすることになりました。これらの刊行にあたっては、

   (i) 完全性(completeness

 (ii) Ver.1からの改善

 (iii) 体裁(appearance

 (iv) 統合(integration)と共通性(commonality

 (v) 検索可能性(searchability

  といったことに十分配慮することとされ、このうち共通性に関しては、NET-CDFNetwork Common Data Format)というNCARUCARが共同開発した、ネットワーク上でデータ交換を効率的に行うためのフォーマットを採用する可能性について早急に検討することになりました。さらに、時間と緯度経度の記述方法の統一について案が示され、合意しました。

 続いて、LADCPLowered ADCP)などこれまで扱っていないデータの取り扱いについて議論が行われました。LADCPデータの取り扱いは、前回の会議で「ADCP-DACLADCPの収集を開始する」とされており、JODCの対応が求められていましたが、JODC及び水路部にはLADCPに関する経験が無いことなどを理由としてそのままになっていました。今回の会議では、JODCLADCPの取り扱いを開始することは極めて困難であると表明し、この分野の第一人者のハワイ大学のFiring博士に議長からコンタクトを取ることになりました。また、プロファイルフロートを全世界に展開しようというARGOThe Array for Real-Time Geostrophic Oceanography)が計画中であることは、DPCでも大きな話題となりました。ARGOのデータ管理についてWOCEの経験が生かせるかどうかという議論が行われ、既存のGTSPPGlobal Temperature and Salinity Profile Programme)の仕組みが活用できないか、検討することになりました。

 今回の重要な議題の一つにCLIVARへの移行がありました。前回の会議に比べてCLIVARの計画策定が進んだこともあり、より進んだ議論が行われました。CLIVARは、WOCEよりもリアルタイム性の強いデータ流通を目指しているとされ、WOCEで確立した既存のシステムの多くを活用するとしても、そのままではCLIVARの理想を満たさない、とCLIVAR関係者が強調しました。WOCEのデータセンターの多くは、研究機関が研究費を獲得して運営しているため、WOCEの研究費が終了した後も維持できるとは限らず、各センターがCLIVAR期間に入ってもこれまでの活動を維持できるかどうかが問題となります。JODCにおけるWOCEデータの管理は、最小限のレベルとしては安定的な予算で運営されていることから、現在の活動を維持することはそれほど困難ではありません。ただ、CLIVAR等の特定の計画に対応するために、そのプロジェクトの継続中に従来のレベル以上のデータ管理をすることと、長期的な目で見たデータの最終保管を確実に実施することとは、議論の性質が異なるので分けて考えるべきである、と主張しました。最小限の活動として、利用可能な形での保管があり、それが確保されて初めて検索可能性や品質管理、さらに高度なデータ管理等について検討するべきであると思います。

 WOCE-DPCも、そろそろ2002年以降のデータ最終保管に向けて、最終段階を迎えつつあります。今回の会合では、当面の課題として2000年に刊行予定のデータセットVer.2に関する議題に時間が割かれましたが、DPCとしては、最終的にすべてのWOCE関連データを集積することも重要な責務であるため、未提出のデータの収集方策についてもしばしば話題となりました。我が国の未提出データについても問題となっていますので、関係者の方々は早急に提出していただくようお勧めします。

(現 海上保安庁水路部企画課  道田 豊)