[北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成９年度第２回研究推進委員会資料
＜大項目＞亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する研究
＜中項目＞モデリングに関する研究
＜小項目＞データ解析とデータ解析手法の研究
担当機関：東海大学海洋学部
担当者：深澤 理郎、岡田 喜裕；淡路 敏之京都大学教授（研究協力）
第T期（３年間）の目標
亜寒帯域での水塊形成に伴う沈み込みを再現できるような診断モデル手法を開発し、
既存資料および本研究で新たに取得される観測資料から導かれる海洋の力学的状況を
客観的に把握する。開発するモデルとしては、静水圧近似を用いない運動方程式を使
用する差分式に基づくモデルおよび、βスパイラルを抱合し得るインバースモデルを
目標とする。
なおモデルの開発・運用に当たっては、実際の海洋構造の時間変化の把握が特に重
要となる。これについては、北緯４７度線上をはじめとする亜寒帯域の１，２点で測
器係留による長期観測等を行い時系列デ−タを取得すると同時に、通常観測データも
新たに取得する。
平成９年度までの成果
@ データの解決手法の開発―Levitusデータを使用してのデータシンセシス手法の開
発―レビタスのWorld Ocean Atlaswデータを用いて北太平洋の１度毎の流速場を作
製し（図１）、その正当性について同じくWOAを使い検討を開始した。―診断モデ
ル・同化モデルの開発―非静水圧モデルを用いて、潮流による鉛直混合および内部
波の非線型的効果が千島列島周辺での海水の低温、低カン化を引き起こす機構を明
らかにした（図２）。さらにこの機構が北太平洋の季節・経年変動に与えるインパ
クトを明らかにするために、NCEP/NOAAのre-analysysdataから運動量、熱、真水の
フラックスに関するメッシュデータを作成し、１０年度以降の計算に備えた（図３）。
なお、同化モデルについてはナジングを考えており、日本海での予備実験からは
良い結果が得られており無試験的な運用を行った（図５）。―４７Ｎ線での観測―
１９９７年８月５日から２６日にかけて、海上保安庁水路部の亜寒帯航海に同乗に、
一般観測作業を行いデータを取得すると同時に、WHPP-1との比較を行える様にデー
タのQCを実施した（図６）。また、１８０E、４７Ｎに流速計３台からなる係留計を
設置した。観測深度は５００ｍ、７００ｍ、および４０００ｍであった。
平成１０年度の研究実施内容
@ データ解析手法の開発―Levitusデータを使用してのデータシンセシス手法の開発―
９年度に作成した流速場の改良を特に海底地形との関連に注目して行っている。そ
の結果とケイ酸塩データを利用して、亜寒帯を中心とした北太平洋内部領域でのケ
イ酸塩輸送を見積もる予定。―診断モデル・同化モデルの開発―９年度に作成した
フラックスデータを用いてインパクト実験を行っている。モデルには緯度経度２度、
５０層の全球モデルとし、混合層ではMelow&Yamadaのクロージャースキーム2.5
を用いている。なお、北太平洋亜寒帯でのデータ不足を補うためには、表層データ
を用いて混合層を再現する必要がある。このための変分法を用いた混合層同化スキ
ームを開発し、他のスキームとの比較実験を行いつつある。
A データ解析の為の補遺データの収集―KNOTとの共同観測―平成９年度から「戦略的
基礎研究」で北西太平洋亜寒帯域に定点が設定されている。これに関わる望星丸観
測航海（１０月５日〜１０月２１日）に参加し、LADCPによる流速プロファイルを
収集すると同時に、セディメントトラップ３，流速計４，塩分水温計３，圧力計２
からなる係留系を北海道大学と共同で設置した。この系は春のブルーミング以降、
１１年６月に回収予定である。また同海域で７点の海底までのCTD観測とLADCP観測
を行った。―４７Ｎ線での観測―９年度に１８０Ｅに設置した係留系は、みらいの
同海域での慣熟運行に同乗し、８月１０日に回収した。３層の内、１層については
データが取得されなかったが、他のデータについては解析中である。
Ｐ１の再観測については東側をみらいの共同利用航海で、西側を水産庁の航海で
カバーする予定である。観測時期は、西側が７月から８月、東側が８月から９月と
なる予定である。
国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定
PICES monitouring WGでＰ１再観測に際しての共同研究可能性の打診があり、今から
でも可能な水産庁との共同研究について、１９９９年１月末に米国内で、日米加の三
者間で協議
主な本年度の成果（１０月２０日現在まで）
・ T.Nakamura, T.Awaji, T.Hatayama, K.Akitomo, T.Takizawa, T.Kono and M.Fukasawa,
1998:Vertical Mixing Induced by Tidally Generated Internal Waves in the Kuril
Straits, submitted to J.P.O on Jul. 1998.
・ A.Nishina and M.Fukasazwa: On the year to year variation of the North Pacific
intermediate salinity minimum.submitted to J.O. on July.
・ A.Nishina,and M.Fukasawa: Characteristecs of the North Pacific Intermediate
Salinity minimum.submitted to J.O. on Aug.1998.
・ Y.watanabe, T.Ono, K.Harada, and M.Fukasawa: Difference in radiocarbon Inventory
in the North Pacific during the last two decades.submitted to J.O. on Aug. 1998.
・ 深澤理郎、松本健寛 1998: 北太平洋亜寒帯域でのfco2と表層水塊分布、海洋学部紀要
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成１０年度第１回研究推進委員会資料
大項目：亜寒帯循環のモデル化に関する研究
中項目：データ解析による亜寒帯循環のモデル化
小項目：インバースモデルの開発
担当機関：水産庁遠洋水産研究所、東京大学気候システム研究センター
担当者：渡邊朝生、杉ノ原伸夫、古恵 亮
第１期（３年目）の目標
データをモデルに同化する事により力学的に矛盾のない海洋大循環像を得ようとするのがイ
ンバースモデリングである。この種の研究は近年開始されたばかりである。その重要課題は
時・空間的に限られたデータから海洋の動態を如何に精度良く把握するかである。本研究で
は中・深層循環を理解する事に焦点を絞ることにより、中・深層循環にとって最適の新しい
インバースモデルの開発に挑戦するつもりである。
平成９年度の研究実績、成果
インバースモデリングとして、修正法、ナジング法、アジョイント法等の手法が既に開発
されている。本研究では、中・深層循環の定常性を仮定してこれらの方法の長所・短所を調
べることから始めた。その結果、データから予報方程式という力学的拘束条件を満足する循
環場に求めるのに最適な、アジョイント法を採用することに決めた。具体的には、Bergamasco等
（Deep-Sea Res.,1993）の手法に準拠したモデルの作成に着手した。
力学的拘束条件として予報方程式は精度の高いものである必要がある。
その為、CCSR-OGCMに高精度移流スキーム（MPDATA及びUTOPIA/QUICKEST）を導入した。
北太平洋モデルを完成させた。また、多量のデータを収集した。
平成１０年度の研究計画（主な航海の予定等）
Bergamasco等（1993）の手法に準拠したアジョイントモデルを作成する。それによって得
られた循環場を用いてトレーサ実験を行うこと等により、モデルを改善していく。
き続いてデータの収集に努める。
国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定
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「北太平洋亜寒帯循環の気候変動に関する国際共同研究」
平成１０年度第１回研究推進委員会資料
大項目：亜寒帯循環のモデル化に関する研究
中項目：北太平洋大循環モデルによる亜寒帯循環の構造とその変動に関する研究
担当機関：気象庁気象研究所・東北大学理学研究科
担当者：石崎 廣・北村佳照・山中吾郎・須賀利雄
第T期（３年間）の目標
亜寒帯表層・中層の平均構造の形成に対して、海面過程の季節変動性は本質的と考えられるの
で、海面素課程（混合層、海氷過程、自由表面化による淡水フラックスの流入出）のモデル化を
計り、表層混合層の季節変動サイクルを再現する。また、主に混合水域での水塊変質過程におけ
る中規模渦の重要性に鑑み、それを表現するための高解像度化を計り渦混合による水塊形成の精
度を上げるとともに、平均循環構造の決定に関与する渦の効果を明らかにする。一方、観測デー
タ解析関連では、既存の海洋観測データとWOCEで取得された高精度データを統合して新たな海洋
気候値データセットを構築する。このデータセットを用いて、等密度面座標の枠組みで亜寒帯域
表層と亜表層・中層の水塊構造を一貫した形で記述する。
平成９年度の研究実績、成果
１． モデル改良：海洋の循環場を外部（順圧）モードと内部（傾圧）モードとに分解して、外部
モードは、従来の固定海面型に対して、自由表面を許す浅海方程式を短いタイムステップで解
く方法に改良した。海面での塩分フラックスの替わりに淡水フラックスを直接与える事が可能
となり、計算時間も１割程度短縮できた。これと平行して、従来（固定海面）の北太平洋モデ
ルを高解像度化し、中規模渦を含む実験を行った。
２． モデルシュミレーション：高解像度モデル実験において、日本南岸での黒潮の直進・蛇行流
路、直進から蛇行流路への遷移過程、並びに房総沖での現実的離岸等がモデル内で再現できた。
また、北太平洋中層の塩分極小層の形成に関連して、中規模渦の拡散効果の重要性の確認が
期待される。
３． 観測データ解析：World Ocean Atlas 1994の元となった各層観測及びCTD/STDデータ
（NODC archive）から北太平洋中高緯度のデータを抽出し、等密度面座標の枠組みで品質管理を
施し、不良データを除去した。このデータを等密度面上で平均化して水温、塩分、溶存酸素に
ついて緯度、経度１度毎の気候値データを作成した。
平成１０年度の活動（主な航海の予定）
１． モデル改良
a. 自由海面モデルで、塩分フラックスを淡水フラックスに換算して与える事を可能にした。
b. 引き続き、海面混合層と海氷過程のモデル化の導入を準備中。
c. 前年度開発の高解像度モデルの移流項を改良した。（QUICK導入）
d. 改良された海面素過程モデルと高解像度モデルの統合（高精度高解像度モデルの完成）を予定。
２．モデルシュミレーション
a. 固定海面と自由海面モデル、塩分フラックスと淡水フラックスの結果を比較し、Goldsbrough循
環と流量の発散成分を評価した。
b. 昨年度再現された、日本南岸での黒潮の直進から蛇行流路への変化過程を詳しく解析した。小
蛇行の引き金の高圧渦が見られた。
c. 高解像度モデルによる実験を継続し、北太平洋中層水の形成と輸送についてのシュミレーション
を行う。
２． 観測データ解析
水塊形成過程を適切に表現できるように混合層の気候値データ作成法に改良を加える事を委託する。
平成１１年度（それ以降）の主な予定
前年度の実験結果を初期値として、高精度高解析度モデルによる実験を開始し、表層混合層の季
節変動サイクルの再現と熱・物資輸送（Ventilation）の評価を試みる。観測データとの比較を行う。
国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定
無
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成１０年度第１回研究推進委員会資料
大項目：亜寒帯循環のモデル化に関する研究
中高目：北太平洋大循環モデルによる亜寒帯循環の構造とその変動に関する研究（一部）
担当機関：東北大学 大学院理学研究科
担当者：須賀利雄
第T期（３年間）の目標
モデルシュミレーション結果との比較、及びその検証を行うために、海洋観測データを解析し、
水塊形成の場としての亜寒帯域表層混合層の実態を解明し、その亜表層・中層の水塊構造への寄
与を明らかにする。
平成９年度の主な成果
World Ocean Atlas 1994(WOA)の元となったデータ（NODC archive）から北太平洋中高緯度の
データを抽出し、等密度面座標に依拠して品質管理を行って、不良データ／精度の疑わしいデー
タを除去した。品質管理後のデータを等密度面上で平均化して、緯度、経度１度毎の気候値デー
平成１０年度の活動
利用可能なWOCEの高精度データを加えて、平成９年度に作成した気候値データを更新する。
等密度面座標による気候値データと合理的に接続する混合層気候値データを作成する。その際、
とくに晩冬の水塊形成を適切に表現するような気候値作成アルゴリズムの開発に重点を置く。
混合層と海洋内部の海水特性分布とを比較し、混合層の亜表層・中層水塊構造への寄与を考察する。
平成１１年度（それ以降）の主な予定
混合層気候値データに改良を加え、海洋内部と混合層の気候値データを合わせて、亜寒帯域の
表層から亜表層・中層までの水塊構造を統一的に記述し、数値シュミレーション結果との比較を
進める。
国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定
合層データ作成アルゴリズムに関して、米国マサチューセッツ工科大学／ウッズホール海洋研
究所の研究者と議論・情報交換を行う予定である。
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
大項目：亜寒帯循環のモデル化に関する研究
中項目：データベースの構築等に関する研究
小項目：モデリング結果等の利用促進に関する研究
担当機関：気象庁気候・海洋気象部
担当者：吉岡典哉、市成 隆
第T期（３年間）の目標
本研究課題に参加するさまざまな異なる分野の研究者がそれぞれの研究成果を中間的なものも
含めて迅速に交換する事により、互いの研究を効率的にすすめる事を目的として情報ネットワー
ク（インターネット）を介して数値モデルの計算結果、解析結果、及び観測計画等の情報を迅速
に交換できるよう、データ交換装置を整備、運用する。
年度毎に収集した研究成果をCD-ROMにとりまとめる。
平成９年度の主な成果
本研究用のデータ交換装置の整備をすすめた。この装置は平成１０年度３月末より運用を開始
し、あらかじめ準備を整えていた「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」ホー
ムページによる一部の情報交換を開始した。
また、関連資料として、
１）「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」実施計画（科学技術庁）
２）全球月平均海面水温解析値（気象庁気候・海洋気象部海洋課）
３）太平洋１００ｍ深水温解析値（気象庁気候・海洋気象部海洋課）
を収集し、これらを収録したCD-ROMを作成して研究推進委員及び各研究担当機関に配布した。
平成１０年度の活動
平成９年度に整備したデータ交換装置の運用を開始する。
ftpサーバの運用を開始し、各研究担当者からの暫定的な観測成果、モデル研究の途中結果など
中間的な情報を交換できる環境を整備する。
ftpサーバを介して収集した情報を適宜ホームページ上に転載する事により、各研究担当者がそれ
ぞれの成果を容易に公表できる環境を整備する。
平成１０年度に収集した研究成果をCD-ROMにとりまとめ、平成９年度と同様に各研究担当機関に
配布する。
また、平成９年度の研究成果CD-ROMは、必要に応じて研究担当機関以外の研究者にも提供し、本
研究の成果の利用促進に努める。
平成１１年度（それ以降）の主な予定
初年度に整備したデータサーバの運用を行う。
年度毎に収録した研究成果等をCD-ROMにとりまとめ、研究成果として公表する。
国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
なし
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成１０年度第１回研究推進委員会資料
大項目：亜寒帯循環のモデル化に関する研究
中項目：データベースの構築等に関する研究
小項目：海洋データの管理及び情報提供の推進
担当機関：海上保安庁水路部海洋情報課
担当者：高芝利博、三宅武治
第T期（３年間）の目標
「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」に係る調査研究の効率的な実施を支援する
ため、研究参加関係者に対して調査データ及び調査に関する情報を迅速に提供すると共に、国際的な
交換窓口を担う。
平成９年度の主な成果
・ プロジェクトで取得される海洋データの標準化システム及びデータベース化システムの開発
本プロジェクトでは従来の各層観測データに加えて、炭酸ガス等の科学分析データ等が取得されるの
で、新たに各層フォーマットの見直しを行い亜寒帯循環に対応した能率的なフォーマットの設計と標
準化プログラムの開発を行った。また、これらのデータでは分析法や分析機器等のメタデータが重要
となる為に、この管理システムを開発した。
・ 「モデル化及びデータ管理」分科会の開催
分科会を２回開催し、プロジェクト内での観測データの流通体制、ホームページの作成及びデータ
リストの作成等について議論がなされ、推進委員会への提案事項の取りまとめを行った。
分科会でのプロジェクトにおけるデータポリシー（案）について、議論を行った。
平成１０年度の活動
（１） 平成９年度に開発した海洋データ標準化システムの改修を行うと共に、平成９年度に開発した
データベースの構築を行う。
本プロジェクトで観測される各種の海洋物理・海洋化学等の観測データを収集すると共に、既
存の観測データを収集し、昨年度に開発したシステムを、プロジェクト参加研究者が利用目的に
応じた形で出力しやすいように改善する。
（２）「モデル化及びデータ管理」分科会を随時開催し、国際プロジェクトに対応すべく
データ交換・管理方法を検討する。
平成１１年度（それ以降）の主な予定
プロジェクトで取得された海洋データのデータベースの充実を図り、迅速な情報・データ流通体制の
構築を推進する。
分科会を開催し利用者のニーズ並びに国際的なデータ管理手法等について検討し、データ管理システ
ムの改善に反映させる。
国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成１０年度大１回研究推進委員会資料
大項目：亜寒帯循環モデル化に関する研究
中項目：データベースの構築等に関する研究
小項目：高精度海洋データ整備の為の品質管理手法の開発研究
担当機関：日本水路協会
担当者：永田 豊
第T期（３年間）の目標
本プロジェクト参加機関が生産するデータについて、メタデータを収集・管理し、本データに付加する。
また海洋学と統計学に照らし合わせた品質管理手法のアルゴリズムについて、研究開発し品質を点検する
ためのソフトを開発する。開発されたソフトによりデータの品質点検を実施し、これを基に本プロジェク
トのデータセットを作成する。品質管理を実施した処理済みデータを海上保安庁水路部ＪＯＤＣに送付し、
データベース化する。
平成９年度の主な成果
（１） 歴史データの発掘、整理：ＪＯＤＣに保有されているデータベースを調査し、収録されていない県
水試関係の実状について岩手水産技術センターを中心に調査した。
（２） メタデータ付加に関する調査：岩手水産技術センター、東大大槌臨海実験場を訪問し、観測者側に
ついてのメタデータに関する実情・意見を聴取した。また、種々の機会を通じて学識経験者からメタ
データ建設上の意見調査を行った。この中には、ユーザーの１つとして数値モデル研究者からの意見
聴取を含む。
また、文献調査に加えて、米国のＮＯＤＣを訪問する機会やオーストラリアＮＯＤＣ所長ベンサー
ル氏の来訪の機会に、メタデータに関する先進事例の調査を行った。
（３） メタデータ基本設計：各方面のユーザーの意向調査から要望事項を網羅した形のメタデータ案と、
生物的データも含む県水試の観測データに適用可能なメタデータ案を設計した。しかし、後者にして
も観測者に大きな負担をかける事が考えられるので、次年次以降に実際のメタデータ作成作業を行い
ながら、より実用的なメタデータ案を作成する。
（４） 海洋学と統計学に照らし合わせた品質管理手法の概念設計：観測現場でも適用できるようなＱＣプ
ログラムの開発を行った。観測点位置や時刻のような基本項目を船速チェック等の手法で計算機のデ
ィスプレイ上でミスタイプの発見や訂正を行い、各種の量の鉛直プロファイルをディスプレイ上で検
討する能力を備えたプログラムである。
平成１０年度の活動
（１） メタデータ付加ソフトの開発：平成９年度のメタデータ調査結果と設計に基づき、岩手水産技術セ
ンター、北水試等の水産関係機関所有のデータについて、水温、塩分、生物、流れの４分野に分けて
メタデータの項目を検討するとともに、実用的なメタデータ付加ソフトを作成する。
（２） メタデータ付加作業：（１）のソフトを使用し、プロジェクト参加機関が生産した実データ及び既
存の観測データについてメタデータ付加作業を実施する。
（３） 品質管理ソフトの開発：平成９年度に開発した現象用ＱＣソフトに基づき、海洋学と統計学を照ら
し合わせた品質管理手法のアルゴリズムを研究し、品質管理（チェック）ができるソフトを開発・整
備する。
（４） 品質検査作業：（３）で開発したソフトを使用し、プロジェクト参加の各機関が生産するデータ及
び既存のデータの品質を点検し、データの信頼性と品質を高める。
平成１１年度以降の主な予定
プロジェクトで取得されたデータ及び発掘・整理したデータの品質管理を実施し、これを基に本プロジェ
クトのデータセットを作成する。品質管理を行ったデータはＪＯＤＣに送付し、データベース化する。
国際協同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定
ＮＯＤＣやオーストラリアＮＯＤＣ等と協力関係にある。このほか海洋データ関係の会議やワークショッ
プに参加し、情報交換に努める。
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成１０年度第１回研究推進委員会資料
大項目：１．亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究
中項目：（２）表層・中層の循環像に関する研究
小項目：B中層循環の実態解明に関する観測研究
担当機関：気象研究所
担当者：金子 郁男（課題代表者：四竈 信行）
第T期（３年間）の目標
北太平洋西部亜寒帯域における北太平洋中層水を中心とした中層循環の実態を、中層フロート、
各層観測等を組み合わせた解析により明らかにする。
平成９年度の研究実績、成果
成９年度中は、解析に使う観測データを取得できなかった。
世界海洋循環実験計画（ＷＯＣＥ）の各層観測データ（Ｐ９、２４、３、４及びＰＲ２１）を用
いた、西部北太平洋亜熱帯・熱帯域の中・深層循環の定量解析研究を通じて、亜寒帯循環域の研
究にも使用するインバース法のソフトウェアを一部開発した。
平成１０年度の研究計画（主な航海の予定）
平成９年度に引き続きＷＯＣＥデータを用いて、西部北太平洋亜寒帯・熱帯循環の定量的解析を
実施した。中層（約４００〜１４００ｍ）の循環に関しては、深澤（１９９２）がLevitusデータ
を用いた解析で示したとおり、中層水の西岸境界への流入は、北緯２５、２０、１０度帯の３つに
大別できることが示された。このうち、２５度帯で流入した１０Sv.と２０度帯で流入した８Sv.の
半分の４Sv.が、黒潮域の中層を東に運ばれることが分かった（別紙図１）。
平成１０年４〜５月に、気象庁の凌風丸と高風丸によって、本州東方の東経１５２度以西におい
て閉じたラインの各層観測（深度２０００ｍまで）とＡＤＣＰ観測を実施し、併せて中層フロート
を放流した。これらのデータを８月に受け取り、データセットの作成とインバース法による予備的
解析を実施中である（別紙図２）
平成１１年度の主な予定
平成１０年４〜５月の各層観測データに、ADCP流速、中層フロート流速、TOPEX/POSEIDON海面高
度を組み合わせた、中層水循環についての総合的な定量解析を実施する。
国際共同研究に関する海外との協力、協議等に状況、予定今のところ無し。