アジアモンスーン機構に関する研究
(Japanese Experiment on Asian Monsoon : JEXAM)
II. 研究の概要
1. 大気・海洋・陸域間相互作用の諸過程に関する観測・解析研究
- (1) 大気における諸過程に関する観測・解析研究
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- 静止気象衛星資料をデータベース化し、モンスーン活動の年々変動、降水システム、エルニーニョとの関連についての解析を行う。
- 前期に観測した対流雲のデータを解析し、対流雲の構造、対流雲による熱、水、運動量の輸送過程を明らかにする。
- (2) 海洋における諸過程に関する観測・解析研究
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- 東南アジア周辺海域及びインド洋を航行する公庁船、商船及び漁船により海洋表層水温の通年観測を行う。
- インド洋に漂流ブイを放流し、大規模海流循環の通年観測を行う。
- 上記で取得した海洋データの標準化、データベース化を促進する。また、インド洋及び東南アジア周辺海域の海洋観測情報交換システムを構築し、取得データを交換する。
- (3) 陸域における諸過程に関する観測・解析研究
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- チベット地域における気象及び陸面の観測を行い、大気陸面間のエネルギー収支を見積もる。
- 商船委託により、インド洋から東南アジア周辺に至る海域での海上気象・高層気象観測、及びウィンドプロファイラーにより下層大気の観測を行い、大気海洋間、大気陸面間のエネルギー収支を見積もる。
- 極軌道地球観測衛星資料から、積雪、雲分布、土壌水分量を算出し、解析する。
- 中国の代表流域の水文資料、水文・気象データを収集し、水収支解析及び蒸発発散解析を行う。
2. 数値モデルによる大気・海洋・陸域間相互作用の実験研究
- (1) 数値モデルによる4次元資料同化システムの開発に関する研究
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- 現在の4次元資料同化システムに、現在使用されていない衛星データ等を組み込めるように高度化を図り、得られた物理量からモンスーン機構を考察する。
- (2) 広域水収支モデルの開発に関する研究
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- 前期に開発した流出量モデル、蒸発散量モデルへの検証・改良を行うと共に、積雪・流出量サブモデルを開発し、積雪地域への広域水収支モデルの適用を図る。
3. 大気・海洋・陸面間の相互作用に関する総合研究
- (1) 大規模モデルによる大気・海洋・陸面間の相互作用に関する実験研究
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- 前期に用いたモデルの改良を行う。また、大気海洋結合モデルを導入し、アジアモンスーンの機構に対する海洋や陸面の役割を評価する。さらに高分解能の大気大循環モデルを開発し、地表面状態や対流活動の影響を評価する。
- (2) モンスーンのエネルギー収支に関する解析研究
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- モデルのシミュレーション結果を衛星観測データの解析結果によって検証し、モンスーン機構のエネルギー収支解析を行う。
- (3) モンスーン循環系の総合解析
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- 海洋や雪氷分布の変動と、モンスーン循環を含む大気大循環や日本の天候の関連を調査する。また、高層・地上・海洋・陸面観測データを用いて総合的に解析することによって、モンスーン循環系を解明する。