アジアモンスーン機構に関する研究
(Japanese Experiment on Asian Monsoon : JEXAM)

I. 研究の趣旨

 アジアモンスーンは、インド洋・東南アジア周辺の海洋とチベット・ヒマラヤを始めとしたアジア大陸の地表面が、その熱的特性の相違により大気を媒体とした熱・水蒸気等の交換を通じて、それぞれ相互に影響を及ぼし合う結果、東南アジア・東アジア地域における季節的な現象として発現している。 その活動の年次の変動は、東南アジア地域や、日本を始めとした周辺地域の気候の変動に大きな影響を及ぼすばかりでなく、大気大循環変動を介して世界の気候にも大きな影響を与えている。 また最近、アジアモンスーンの活動の異常は西部熱帯太平洋域の大気・海洋変動を引き起こし、これが太平洋規模で発生するエル・ニーニョ/南方振動の引き金となっている可能性があるという研究報告もあり、この点からも注目する必要がある。 しかしながら、これらの地域・海域は、対象域の広大さや観測環境の厳しさ等から観測体制が整備されておらず、気象・海象・陸象の基本的な要素に係るデータの収集が必ずしも十分に行われているとは言えない。
 従って、アジアの一員であり、アジアモンスーンの直接的影響を受け、大気・海洋観測の十分なポテンシャルを有する我が国が、世界の気候を形成する複雑なシステムの一つであるアジアモンスーンの機構を解明するため長期的・総合的な研究を実施する事が緊要となっている。本研究を実施することにより、我が国を含むアジア地域における旱ばつや長雨といった異常気象発現の予測技術のみならず、世界的規模の気候変動を予測する技術の発展に寄与することが期待される。
 以上のような状況を踏まえて、本研究は1989年度から10年間の計画で行っている。